オルセー美術館2階。自然主義と後期印象派の絵画たち。

2018/09/27

ミュージアム

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0階、5階と回ってとうとう2階へやってきました。

2回には自然主義と後期印象派の絵画が展示されています。印象派のような分かりやすい華やかさはないかもしれませんが、当時の人々をより近く感じられるような絵が多かった印象です。



前回までの記事はこちら↓

Salle 54
『Chrysanthèmes dans un vase』アンリ・ファンタン=ラトゥール(Henri Fantin-Latour)
私が植物が好きだからか植物を描いた絵って好きです。


『Saule pleureur』(Claude Monet)1920 et 1922
晩年にモネは「しだれ柳」をテーマにいくつかの作品を残しました。この絵はその中でもとりわけ暗い一枚。もはや柳だということを判別するのは難しいし、白内障が悪化していたのでしょうか、この頃に描かれた絵はどれも輪郭がかなりぼやけています。

Salle 55
『ルイ・パスツール(Louis Pasteur)』アルベルト・エデルフェルト(Albert Edelfelt)
パスツール。ワクチンを開発した人ですね。オルセー美術館でパスツールに会えるとは思っていなかったのでビックリ。
エデルフェルトはフィンランドにおける写実主義の始祖の1人であった。ルイ・パスツールの肖像画がパリのサロンで展示されると、エデルフェルトはレジオンドヌール勲章を授与された。

Salle 57

『ロジェ・ジュールダン夫人の肖像(Madame Roger Jourdain)』アルベール・ベナール(Albert Besnard)
このドレスの光沢。光の反射。なんてきれい。


『夜会(Une soirée)』 ジャン・ベロー(Jean Béraud)
 フランスで人気の画家だったジャン・ベロー。同時の印象派の画家がパリのカオスを描こうとせず郊外で絵を描いていたのと対照的に、彼は人々の都市での生活を描きました。

『Le jour de la visite à l'hôpital』アンリ・ジョフロワ(Henri Geoffroy)
ぐったりとして顔色の悪い子ども。入院しなければならないほどの重い病気。そばに置いてあるオレンジを全部食べ切る気力もないのか、食欲がないのか……。
あまり裕福そうに見えない男性は父親でしょうか。お母さんが一緒にお見舞いに来ないのはどうして?
忘れられない一枚。

Salle 58
『Les résignés』アンリ・ジョフロワ(Henri Geoffroy)
上の絵にも子どもが描かれていますが、アンリ・ジョフロワは子どもの絵を数多く描きました。


『La vache blanche』ジュリアン・デュプレ(Julien Dupré)
ミレーらに影響を受けた自然主義の画家、ジュリアン・デュプレ。当時最高の動物画家の一人です。写実主義ではありましたが、印象派の影響を受けて絵が明るい雰囲気です。

この絵、うららかな昼下がりに女性がミルクを絞っている何気ない風景に見えますが、左の奥に仁王立ちしているおばさんが目に入ると少し違和感をおぼえます。この二人の関係性は一体?さらに乳牛がすごく痩せていることにも目が行きます。

明るいタッチと農民の暮らしの妙な不調和を感じるのは私だけでしょうか。

Salle 59

『La Fortune』リュック=オリヴィエ・メルソン(Luc Olivier Merson)
のどかな春の景色に女神が描き込まれたファンタジーな一枚。


『プラトンの学園(L'école de Platon)』ジャン・デルヴィル(Jean Delville)
ベルギー象徴主義の画家、デルヴィルの作品。

この作品『プラトンの学園』という題ですが、周りにいる弟子の数は12人だしプラトンではなくイエスを描いたもののようにも見えます。

プラトンの頭上にある藤の花や左にいるクジャクには何か意味が込められているのでしょうか。

『Fléau !』Henri Camille Danger
『災難!』という意味。
肌色のハルク(マーヴェルの映画に出てくる大きくて緑色の巨人)みたいです。破壊されている街は特定のどこかではなく、色々な場所や年代の建物が混ざっているそう。

1901年に描かれたこの絵は、誇張によって描かれる20世紀の映画作成の到来を知らせている点で重要な意味を持っています。


『Nymphes de Nysa』ジュリアス・ルブラン・スチュワート(Julius Leblanc Stewart)
この人の絵ってどこかマネを彷彿とさせます。

この画家の父親は富豪で、彼が10歳のときにアメリカからパリへ渡って、美術品を収集したそう。そして彼も10代の頃から画家に弟子入りして絵を学びました。芸術一家だったんですね。

Salle 60

『Coin de jardin à l'Hermitage. Pontoise』カミーユ・ピサロ(Camille Pissarro)1877年
ピサロの絵は5階にもいくつかありましたが、どれを見ても構図や光の雰囲気に引き込まれます。
印象派展は全8回開かれたが、全てに参加したのはピサロだけである。第4回印象派展の頃から、主に風景画を描くモネ、ルノワールらの仲間と、風俗画を描くドガとの間で、サロンへの立場など様々な問題について意見の対立が顕在化し、ピサロは、その調停を試みたが、グループの分裂を防ぐことはできなかった。
1885年、若手のジョルジュ・スーラと知り合うと、その点描の技法に感化され、1880年代後半は、周囲の不評にもかかわらず、新印象主義を追求した。
最後となる第8回印象派展にスーラの『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を出品させたのもピサロであるが、この展覧会は、印象派の終焉を象徴するものとなった。
この絵も点描の影響が見られます。

『Eglise de Vétheuil』クロード・モネ(Claude Monet)1879年
苦楽を共にした妻、カミーユが亡くなった年に描かれた絵。当時モネには愛人がいたからカミーユが亡くなって都合が良かった、とか書かれているのを目にしますが、この寒々とした絵を見るとそんなことなかったんじゃないかな、と思います。


『Marine, Guernesey』オーギュスト・ルノワール(Auguste Renoir)1883年
ルノワールの描く海。

『Hôpital Saint-Paul à Saint-Rémy-de-Provence』フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent Van Gogh)1889年
入院していた精神病院を描いた絵。
手前の木は松の木のようにも見えますが、フランスで松はあまり見かけません。構図も浮世絵を少し連想するような感じがしますし、浮世絵風の絵なのかもしれません。

Salle 67

『八角形の自画像(Autoportrait octogonal)』エドゥアール・ヴュイヤール(Edouard Vuillard)
オルセー美術館に新しく加えられた絵。

『Le chat blanc(白猫)』ピエール・ボナール(Pierre Bonnard)

『Le corsage à carreaux』ピエール・ボナール(Pierre Bonnard)

Salle 69 新印象派
『Usines près de Charleroi』マクシミリアン リュス(Maximilien Luce)
工場地帯の景色を描いているにもかかわらずどこか幻想的で美しい雰囲気です。

『Maximilien Luce』アンリ=エドモン・クロス(Henri Edmond Cross)
新印象派の巨匠、クロスの絵。上の絵画の作者、リュスの肖像画です。


『Le cirque(サーカス)』ジョルジュ・スーラ(Georges Seurat)

『Le cirque(サーカス)』ジョルジュ・スーラ(Georges Seurat)
全く同じ題名、構図で1891年に描かれた2枚の絵。なのに全然違って不思議です。大きさも結構違います。実験でもしていたのでしょうか?ちなみにスーラが31歳という若さで亡くなるのも1891年のこと。

ところで知り合いの画家に
「点描画って簡単そうだから、私にもできますか?」
なんて馬鹿な質問をしたら、
「点描画は普通の絵より難しいよ」
と言われて驚いたことがありました。よく考えるとそうですよね……。

描いたことがないので分かりませんが、きっと光や色が緻密に考えられ描かれているのでしょう。

『Route de Gennevilliers』ポール・シニャック(Paul Signac)
荒涼とした雰囲気。モンマルトルと郊外の景色を描いた絵です。モネの影響がみられるそうですが、私にはあまり分かりませんでした。

Salle 71,72 後期印象派の巨匠、ゴッホ
Vincent Van Gogh
La guinguette à Montmartre
en 1886

Vincent Van Gogh
Le restaurant de la Sirène à Asnières
en 1887

私はきれいなものが好きで、だから多くの印象派の絵のような、たとえ夜を描いていたとしても明るくて優しいような絵が好きです。

Vincent Van Gogh
La nuit étoilée
en 1888

ゴッホの亡くなる前の絵は彼の絵の中でも特に評価を得ているものですが、私は正直苦手です。好きとか嫌いとかを超えて彼の絵は怖い絵です。

彼が精神に変調をきたしていたというのは有名な話ですが、そんなことを知らなくても彼の絵は異常です。

Vincent Van Gogh
Portrait de l'artiste
en 1889

絵から伝わる彼の熱量。彼のそばに常にあったものの痕跡。おかしな色。歪められた筆跡。

 Vincent Van Gogh
La méridienne
entre 1889 et 1890

この頃の画家はこぞって浮世絵にハマっていたようですが、ゴッホの浮世絵への熱のあげ方もまた異様なほどです。食事をろくに取れないほどお金に困っているのに浮世絵を集め、模写し、自分の絵に登場させています。

当時もう少し交通手段が発達していたら、きっと日本にも来たんじゃないかな。

Vincent Van Gogh
L'église d'Auvers-sur-Oise, vue du chevet
en 1890

Vincent Van Gogh
Le docteur Paul Gachet
en 1890

Vincent Van Gogh
Deux fillettes
en 1890

最後の三作はどれも1890年の6月に描かれた絵。彼が亡くなるのが同年の7月のこと。

ゴッホの絵が苦手だと書きましたが、「絵が描けるようになりたい!」という願望をつい持ってしまうのはゴッホの絵を見るときです。絵からあふれるエネルギーが人をそうさせるのでしょうか。


以上で2階の紹介は終わりです。

オルセー美術館というと印象派の美しい絵画が注目されがちではありますが、彫刻も見逃せません。絵画に比べて注目を浴びていませんが、ロダンの巨大な作品があったりします。
絵画と違って彫刻は立体ですし、これだけ大きな彫刻だと展覧会でも目にすることはないので、オルセー美術館へ行かれるときは彫刻もぜひじっくり鑑賞してみましょう。

オルセー美術館の各階の紹介は、オルセー美術館の中で見やすいように順路にそって書いています。もしどなたかが、このブログの記事を片手にオルセー美術館を回って下さったらすごく嬉しいな~とささやかな願望を抱いています。


参考:

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